私はその類(たぐい)ではない

「数」とは何か、そしてそれはどうあるべきか

ジミー・クリフ訳詞『Bongo Man』:梵語萬来れり。来よ。来よ。

梵語萬(ボンゴマン)来(きた)れり
来よ 来よ
梵語萬来れり
来よ 来よ


夜明けの遥か前に
我警告を発せり
皆準備は良いか
今ここに梵語萬在りて
我と我(I&I)はザイオンへと向かう

政治家や教会のお偉方に従う者よ
お前たちが来ることは決してない

原詩:https://www.jah-lyrics.com/song/jimmy-cliff-bongo-man

CD『The Best of Jimmiy Cliff』(1995年版)に添付されていた解説(“Black Music”誌のCarl Gayle著)によれば、ジミー・クリフイスラム教に入信したのは1970年代初めのことらしい。したがって、本曲が収録されているアルバム『Give Thankx』のリリース時(1978年)には、クリフ氏はすでにイスラム教徒であったことになる。クリフ氏の長いキャリアの中で、彼がこのようなモロに「ジャー・ラスタファーライ」信仰をベースとした歌詞を歌うのはあまり例がない。クリフ氏が発表した曲をすべて把握している訳ではないが、彼が「アイ・アンド・アイ(I&I)」や「ザイオン(Zion)」と歌唱する曲はもしかしてこれが唯一ではないか。

本ビデオの「5:35」時点でジミー・クリフが「ジャー・ラスタファーライ!」とシャウトする映像を見ることができる。

ジミー・クリフラスタファリアンではなくイスラム教徒である」という情報を私が初めて知ったのはいつだったか?はっきりとは憶えていないが、多分アルバム『Give Thankx』がリリースされた時点ではそのことを既に知っていたように思う。ただし、このような個人的な情報がマスコミに公開されたのは、ジミー・クリフは実は「偽ラスタ(fake rasta)」であるという印象を聴き手に与えようとする、クリフ氏に対するネガティブキャンペーン派のしわざであった可能性もある。

だが、イスラム教徒であるならば「ジャー・ラスタファーライ」を賛美してはならず、「アラーは偉大なり」と歌わなければならない、などという道理はない。ジミー・クリフ個人がイスラム教徒であろうが◯◯学会の会員であろうが、そのような個人的な属性情報は、クリフ氏に帰せられる偉大なるシンガーとしての才能や業績をいささかも毀損するものではない。
歌い出しのボーカルは「ボンゴーマンハズコォーム。コォーム。コム」と聴こえる。
”Bongo man has come”に続く"come, come"を「来よ、来よ」と訳したのは、これが『ヨハネの黙示録』からの引用のように思われたからだ
また、私は見た。小羊が七つの封印の一つを解いたとき、四つの生き物の一つが、雷のような声で「来なさい。」と言うのを私は聞いた。
ジャー・ラスタファーライ信仰とヨハネ黙示録の関係については良く知らないのだが、現在、次のような文書が翻訳で入手できるようだ。
また、こんな和書もある。
「レゲエという実践: ラスタファーライの文化人類学」(https://www.amazon.co.jp/dp/4814000871/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_SAj7ybNDCJ5X6)

また、今ではマーカス・ガーベイ関連の文書もいくつか入手可能なようだ。
「Marcus Garvey: Ultimate Collection of Speeches and Poems」(https://www.amazon.co.jp/dp/B01DS4O1F4/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_hDk7ybHXS3MCR
イスラム教と黒人の歴史的な関係については、マルコムX関連の文献も参考になるかもしれない。
「完訳マルコムX自伝(上)」(
https://www.amazon.co.jp/dp/4122039975/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_yFk7ybFSHHKVN

前述のCD『The Best of Jimmiy Cliff』に添付されていた解説によれば、ジミー・クリフはアイランドレーベル在籍時代にはヒットに恵まれず苦悩しており、それが彼のイスラム教入信の理由となったのではないかとのこと。また、
映画「The Harder They Come」(1972年公開)はジャマイカではヒットしたものの、アメリカやイギリスではカルトムービー扱いであり、クリフ氏は金銭的にずっと苦しい状態だったという。だがこれらの情報の多くは、クリフ氏本人のインタビューには基づいておらず、アイランド・レーベルの社長(クリス・ブラックウェル)や当時のミュージシャン仲間(デルロイ・ワシントン)による証言のみに基づいた推測に過ぎない。

私が映画「The Harder They Come」を宮崎市の映画館で見たのは1979年頃であり、なんと日本映画「限りなく透明に近いブルー」との2本立てだった。おそらくマリワナ括りで一緒にされてしまったのだろう。キリスト教の教会でクリフ氏が歌唱するシーンがあったようにも思うが、どんな映画だったかほとんど記憶にない。

この曲が収録されているLP『Give Thankx』は、高校生の時に友人のZ君の自宅のステレオで初めて聴いたと思うが、記憶に残っているのは唯一この曲だけであり、他の曲は全く印象にない。今調べたら、聴き手に強烈な印象を残すこのナイヤビンギ(Nyahbinghi)ドラムは本家本元の"Ras Michael & The Sons Of Negus"による演奏であり、コーラスはMeditationsだ。

備考:アルバム『Give Thankx』(1978年)に収録されている"Bongo man"はリメイク版であり、オリジナルは「Bongo man (a come)」というタイトルで1971年頃にシングル(ジャマイカのみ?)でリリースされ、1973年にIsland Musicにより著作権登録された曲のようだ。オリジナル版はリメイク版とは歌詞が異なっており、"I&I"も"Zion"も登場しない(http://www.azlyrics.com/lyrics/jimmycliff/bongoman.html)。